予防医療と東洋医学

世界中で評価が高まる東洋医学

東洋医学への関心と注目は、西洋医学が席巻していた欧米でこそ高まっています。

WHOの東洋医学への期待と評価

WHO(世界保健機関)の東洋医学への期待と評価が高くなってきています。

2006年にはWHOにおいて「経穴(ツボ)」の国際標準の認定がなされ、2018年6月にはWHOが定める「国際疾病分類 第11回改訂版(ICD-11)」において、東洋医学が「伝統医学」として加えられています。

近年、生活習慣病などの慢性疾患や、高齢化社会に伴う寝たきり等の要介護状態の患者が世界的にも増えており、これらに対する治療目的に「緩和医療」や「プライマリ・ヘルス・ケア」が注目されています。

WHOは、気管支喘息や腰痛など49の疾患・症状を、臨床経験に基づいた鍼灸治療の適応疾患とし、東洋医学における「緩和医療」や「プライマリ・ヘルス・ケア」としての価値を高く評価しています。

世界の東洋医学に対する評価と動き

アメリカでは、国立衛生研究所内に設置された補完代替医療センターで、「補完的代替医療」としての鍼灸や漢方薬治療には、手術前後の体のケアや、ガンなどの痛みの緩和、予防といった効果が認められ、15年前から大々的に研究費を投入して、東洋医学の研究が行われています。

そのため、現在多くの大学病院には鍼灸治療院が併設され、西洋医学に並行して用いられています。さらに、麻薬中毒者のケアや精神疾患の治療においても、鍼灸が注目されています。

カリフォルニア州では、はり師に関する専門職大学院課程による3~4年のプログラムが組まれ、はり師が漢方を処方できるようにもなっています。

 

またイギリスでも、東洋医学の地位を証明する動きが見られるようになり久しく、2000年代に入ってからは大学で鍼灸に関する学位を取得できるようになっています。

2018年11月15日、この日が「World Acupuncture Day(世界鍼灸の日)」として定められ、パリのユネスコハウスに多くの専門家が集って鍼灸の臨床結果や可能性について報告し合いました。

British Acupuncture Councilの研究責任者であるマーク・ボビー氏は、5人に1人がさまざまな理由による慢性的な痛みを抱えているヨーロッパでは、鍼灸治療がさらに取り入れられるべきであるという考えも述べています。

東洋医学の国内の評価

東洋医学が一度衰退してから、日本国内では西洋医学を主とする治療が推奨され、病気になってからそれぞれの症状緩和のために行う「対症療法」と言われる治療がほとんどを占めてきました。

しかし近年、生活習慣病や慢性疾患の患者の増加、「予防医学」の観点からも、国内でも東洋医学の存在が重要視されるようになってきています。

また、外科的手術や西洋医学で使われる薬には、副作用の強いものが多い一方、鍼灸治療や漢方は副作用が少なく、身体への負担が小さいため「緩和医療」としても注目されています。